シラバス参照 |
講義概要/Course Information |
科目基礎情報/General Information |
授業科目名 /Course title (Japanese) |
文化干渉論 | ||
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英文授業科目名 /Course title (English) |
Cultural Interference and Interaction | ||
科目番号 /Code |
HSS513z | ||
開講年度 /Academic year |
2019年度 | 開講年次 /Year offered |
3/4 |
開講学期 /Semester(s) offered |
前学期 | 開講コース・課程 /Faculty offering the course |
情報理工学域 |
授業の方法 /Teaching method |
講義 | 単位数 /Credits |
2 |
科目区分 /Category |
総合文化科目 | ||
開講類・専攻 /Cluster/Department |
情報理工学域 | ||
担当教員名 /Lecturer(s) |
谷崎 秋彦 | ||
居室 /Office |
講師控え室 | ||
公開E-mail |
tanizaki@tamacc.chuo-u.ac.jp | ||
授業関連Webページ /Course website |
なし | ||
更新日 /Last update |
2019/03/06 01:55:34 | 更新状況 /Update status |
公開中 /now open to public |
講義情報/Course Description |
主題および 達成目標(2,000文字以内) /Themes and goals(up to 2,000 letters) |
主題 ユダヤ系ドイツ人哲学者のヴァルター・ベンヤミンの小著「複製技術時代の芸術作品」を繙読しつつ、以下のような論点を考える。ベンヤミンは二十世紀のドイツに属する思想家だが、同時にユダヤの来歴を持つためヘブライ的思想にもおおいに通じている。このためその著作を読み解くならば、近現代のドイツの思想的潮流と古代以来のユダヤ的着想との絡み合い、ないしせめぎ合いが見て取れるだろう。本講座では、これら(近現代のドイツの思想の動向、およびユダヤ思想の系譜)も概説しながら、ベンヤミンの所論を追ってゆき理解をはかりたい。そして同時に、上掲の著作が属する時代(1930年代後半)は、世で最も〈民主的〉ともされたワイマール憲法の下でナチス政権が発足し威を振るっている時代であることにも注目したい。ナチズムが偶発的で突発的な特異な出来事というよりも、むしろ起こるべくして起こったものとして捉え、これを用意した近代という時代の推移をベンヤミンとともに考えたい。 この場合に、我々のテクストで主題的に扱われている「複製技術」という概念が重要な手がかりになりえると思われる。ナチズムに限らず、広い意味での「政治的な事柄」がプロパガンダ(宣伝活動)として瞬時に広範囲に伝播し、思想的な統制が可能になることと、複製技術の展開とは、極めて強い結びつきがあるものと思われる。この動勢を早い時期から指摘して、これにより政治が変容していくさまを論じているのが同書である。ベンヤミンはこの推移が十九世紀後半から諸方面で進展していくさまをさまざまな論考で扱っているので、これらの諸説も合わせて紹介しつつ一緒に考えたい。 達成目標 ドイツの思想とユダヤの思想(これらは対立するものではないが同じものでもない)を、簡便にでもよいからそれぞれにおいて理解し、またこれらが諸他の地域(例えば英米、フランス等)の思想とも趣が異なり、さらに古代や中世の諸思想とは向かっていく方向が違うということを大雑把なりとも理解してもらいたい(西洋思想といっても単体ではなく、時期と地域とによって位相を異にすることを立体的につかんでもらいたい)。さらに、同書でベンヤミンが扱うのは「芸術作品」であるが、この芸術は同時に「技術」とも訳されうる語である。この技術が近代にかけてなした推移が政治的なものの風土を一変させる、と主張されているのである。だとすれば「技術・テクノロジー」は〈中立〉であるというよりも、むしろ「政治(広い意味での共同体の構築の仕様)」と連動している、という観点から、各自において「技術(芸術)」を捉える観点を涵養してもらいたい。 |
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前もって履修 しておくべき科目(1,000文字以内) /Prerequisites(up to 1,000 letters) |
なし |
前もって履修しておくこ とが望ましい科目(1,000文字以内) /Recommended prerequisites and preparation(up to 1,000 letters) |
科目としてはなし。 (下記に示すキーワードに関心のある受講者を望む) |
教科書等(1,000文字以内) /Course textbooks and materials(up to 1,000 letters) |
教科書 『ベンヤミン・コレクション(1)近代の意味』、ヴァルター・ベンヤミン著、浅井健二郎監訳、ちくま学芸文庫版(筑摩書房) 参考書 上掲書所収の他の論文 「シュルレアリスム」「言語一般および人間の言語について」「パリ――十九世紀の首都」など 『ベンヤミン・コレクション』の他の諸巻(2)~(7)(とりわけ(2)所収の「翻訳者の使命」) |
授業内容と その進め方(2,000文字以内) /Course outline and weekly schedule(up to 2,000 letters) |
授業内容とその進め方 第1回 ヴァルター・ベンヤミン著「複製技術時代の芸術作品」総論 この回で(受講希望者多数の場合)履修学生を40人ほど(この数は状況により上下する)に選抜するので、初回授業には必ず出席すること。「現代における複製技術の功と罪について」あるいは「技術と政治との関わりは?」あるいは「芸術作品は現在においてどのような意味をもつのか」というテーマから選択して作文してもらい、教員がその課題文を読んで、この授業を選択できる学生を選抜する。初回授業までに、履修希望学生はこれらのテーマについてよく考えておくこと(自分の記したメモなどを持ってくるとよいだろう)。 第2回 ベンヤミンという人物について その思想の諸断片の紹介 第3回 ユダヤ思想、そしてユダヤ的なもの、とはどのようなものか 第4回 「近代」の意味と近代におけるドイツ哲学の位置 第5回 複製技術時代の来歴と行く末 第6回 二十世紀(とりわけドイツ)の現況と複製技術 第7回 ナチズムと宣伝。ニュルンベルクの党大会とベルリンオリンピック 第8回 映画、映像がもたらしたもの 第9回 20世紀初頭の政治的状況 第10回 国家社会主義ドイツ労働者党の政権とユダヤ人の運命 第11回 複製技術の本質について 第12回 近代以降の芸術(美学)とはどのようなものか 第13回 技術と芸術 第14回 技術と政治 第15回 総まとめとして「複製技術時代の芸術作品」とはどのような出来事か テクストを繙読する際には事前にその箇所を指摘するので熟読しておくこと。また短い論考であることだし、必ず早い時期に通読しておくのがよい。これに類する濃密な文は何度も読み重ねることにより重層的な意味が浮かびあがってくるものであるから、複数回読むことを試みるのがよい。授業内では該当箇所を輪読することもある。基本的には講義形式で進んでいく。しかし現代技術、また技術の歴史について、さまざまな事実関係に関して下調べする機会等もあるので、その場合には指示に従い怠りなく準備すること。 |
実務経験を活かした 授業内容 (実務経験内容も含む) /Course content utilizing practical experience |
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授業時間外の学習 (予習・復習等)(1,000文字以内) /Preparation and review outside class(up to 1,000 letters) |
教科書として示した書物は、難解ではあるが読み甲斐があるものなので、学校の行き帰りにでも少しずつ読んでみると得るものが多いと思われる。いわゆる思弁的な哲学書は、読み慣れることによって徐々に理解が進むものなので、よく分からずとも読み進めるのがよいだろう。 |
成績評価方法 および評価基準 (最低達成基準を含む) (1,000文字以内) /Evaluation and grading (up to 1,000 letters) |
成績評価 学期末のレポート70%、随時行う授業への感想(これによって出席もカウントされる)30%と理解していただきたい。 出席はそもそもの要件となるが、積極的に参加する必要がある。具体的にはよく文字を追い、傾聴し、必要に応じてノートを取る、などが求められる。ちなみに〈ノートを取る〉とは、単に語られた断片を記録することが大事なのではなく、語られたこと、読み取ったもの、などから自分が触発されたことを記し、みずからの思考や態度を刷新し拡張するためのものである。この意味では、受講者各人が、それぞれ別のことを書き留めて、別のノートが仕上がることが結果として有益なものとなる。総じて大学の授業は、何かを習得するというよりも、授業内容をみずから膨らませて新たなものを発見することにその意義があるといえよう。 レポートで求められるのは、主として使用テクストへの感想である。その感想の要点は、各自の観点から自分の関心を浮き彫りにして、それを他者にわかるように伝えることができる文として提示する、ということになる。 (各自の観点を醸成する、ということが狙いであるため、他人の書いたものを引用することは不要とする。他者の言説(とりわけネット上のもの)は参照・参看するにとどめること。事実関係に関する引証は例外とするが。) |
オフィスアワー: 授業相談(1,000文字以内) /Office hours(up to 1,000 letters) |
適時相談に応じるが、電子メールなどで事前にアポイントを取ること。主として金曜日五限前後(もしくは木曜日一、二限)(講師控え室)。 |
学生へのメッセージ(1,000文字以内) /Message for students(up to 1,000 letters) |
ある賞の受賞者の話だが、innovationとは闇雲に自分をせき立てることにより倦まれるのではなく、むしろ、発想の転換が為された折にふと生まれるものだという。この意味で、思想的に豊かになること、さまざまな時代・地域のいろいろな出来事を見聞することは、そのような発想の転換の下地となることだろう。無駄な遠回りとは考えずに、思想的な書物にも(他のものにもだが)触れてみるのがよいだろう。 |
その他 /Others |
文化、あるいは思想といわれる方面に関心をもつことは、みずからの視野を広げることに益するだろう。しかもそれを若い頃から始め、それを継続することには大きな意味があると思われる。本講座を履修しないとしても、「思想」を無駄なものとは思わないでもらいたい。 |
キーワード /Keywords |
ドイツ哲学 ユダヤ思想 ベンヤミン ナチズム 複製技術 芸術 技術 |