シラバス参照

講義概要/Course Information
2020/04/28 現在

科目基礎情報/General Information
授業科目名
/Course title (Japanese)
技術者倫理
英文授業科目名
/Course title (English)
Ethics for Engineers
科目番号
/Code
CAR801r
開講年度
/Academic year
2020年度 開講年次
/Year offered
4
開講学期
/Semester(s) offered
後学期 開講コース・課程
/Faculty offering the course
情報理工学域
授業の方法
/Teaching method
講義 単位数
/Credits
2
科目区分
/Category
実践教育科目
開講学科・専攻
/Cluster/Department
先端工学基礎課程
担当教員名
/Lecturer(s)
原田 忠則
居室
/Office
なし
公開E-Mail
/e-mail
uec-ji1bxm@dialectech.net
授業関連Webページ
/Course website
https://dialectech.net/rinri/
更新日
/Last updated
2020/02/26 09:38:14 更新状況
/Update status
公開中
/now open to public
講義情報/Course Description
主題および
達成目標
/Topic and goals
 この講座では、技術者が、個人に対し、社会に対し、また国家に対して負うべき責任とその果たし方を、直感的に把握できるように基礎的技法を習得します。
 そして、みなさんが今後、商品・サービスを企画・開発・設計・製造・実装していく中で、注意すべき点を知識に頼らず自ら気づくことができ、かつその解決策を探ることができるようになることを達成目標とします。
前もって履修
しておくべき科目
/Prerequisites
 特にありません。
前もって履修しておくこ
とが望ましい科目
/Recommended prerequisites and preparation
 特にありません。
教科書等
/Course textbooks and materials
 教科書は指定しません。講義で必要な資料は教員がWeb上で準備します。
授業内容と
その進め方
/Course outline and weekly schedule
1 授業の概要について
 本講義では、3つのパートで構成し、理科系的思考パターンを基調としつつ、文系的指向である技術者倫理を理解できるまでをガイドします。
 第1部では、思考の基礎となる弁証法を図形的に理解していきます。
 第2部では、倫理を検討するうえで重要な「利益」に着目し、その内容を見ていきます。
 第3部では、第2部までに学んだ技法を用いて、世の中で発生している諸問題をどのように分析し、かつ解決していくのかを演習します。

2 授業の進め方について
(1) 講義形式を基本とします。
(2) 前記の形式では講義で進めにくいテーマもありますので、そのときにはソクラテック・メソッド(問答法)を実践します。

3 使用する機器について
 個別に発言しにくいテーマにも触れますので、匿名型の電子投票・投稿システムを併用します。スマート・フォンやハンドヘルドPCを持っているかたは、積極的に利用してください。もちろん、これらを持っていない方でも、問題ありません。

4 テーマについて
 各回で触れるテーマは以下の通りです。ただし、今年は一年目なので、受講される皆さんの状況によって柔軟に変更します。

第1回 ガイダンス・「対立」を意識することから始める倫理と技術の発展
第2回 思考ツールとしての弁証法(1) 弁証法の図形的理解、Toulminの議論モデルとの関係
第3回 思考ツールとしての弁証法(2) 第1回で触れた法・倫理の趣旨を再考する
第4回 思考ツールとしての弁証法(3) ひととひととの関係、法律・倫理の全体構造を把握する、議論と討論の違いを意識する
第5回 技術者倫理についての一般的アプローチ(文章化された技術者倫理思考法)と、利益についての一般論(個人的利益・社会的利益・国家的利益・世界的利益)、チャレンジャー事件
第6回 法律に見られる利益の調整(1) 概論(精神的利益・身体的利益・経済的利益)、憲法/刑法にみられる利益の保護
第7回 法律に見られる利益の調整(2) 主として個人情報保護法の利益の理解、「不測の不利益」の意義
第8回 法律に見られる利益の調整(3) 個人情報保護法の利益の理解の続き、OECD8原則、会社において倫理的な行動をする責任を担う者
第9回 知的財産の取扱い(1) ソフトウエア持ち出し事件、知的財産制度の全体構造、特許制度
第10回 知的財産の取扱い(2) General Public License、著作権制度、パロディの取扱い
第11回 知的財産の取扱い(3)と事例検討アプローチ 商標を巡る制度(商号、商標権)、事例を検討する際の一般的説明(主語と述語とを確定させる意味)、論文無断転載事例
第12回 総合演習(1) 論文無断転載事例を用いた利益の抽出、JCO東海事件の検討
第13回 総合演習(2) 解決策に向けた別のアプローチ、Twitter等SNSに見られる倫理問題、公益通報者保護制度、自動車メーカーのリコール放置事案、建築物設計事例
第14回 総合演習(3) 建築物設計事例(続き)、ダム建設事例、医療技術者事例、人工弁事例(複数組織が絡む例)
第15回 総復習 利益を視点とした技術者倫理アプローチの総復習
実務経験を活かした
授業内容
(実務経験内容も含む)
/Course content utilizing practical experience
 キヤノン株式会社における半導体開発経験、ソニー株式会社における産業用ロボット開発経験、同じくソニー株式会社における特許部・知的財産企画部における知的財産経験、並びに弁理士として特許事務所における中小企業への経営支援・設計支援経験に基づいて、技術者としてもつべき倫理の理解を進めます。
 また、指導においては、法科大学院において学んだ法律的知識を背景に、観念論的弁証法を基礎理論の裏付けに用い、総合的かつ客観的立場からの把握視点も意識してもらえるようにして理解を深めます。
 更に、持続可能な循環型社会について触れる項目では、気象予報士の立場から問題意識をお伝えします。
授業時間外の学習
(予習・復習等)
/Preparation and review outside class
 法律・倫理系の知識について「中途半端」な予習をすると間違った予断を持つ可能性がありますので、復習を中心とします。ただし、第1回で平成24年度センター試験国語第1問の問題を配布します。第2回までにやっておいてください。そして、講座終了時にもう一回同じ問題をやってみてください。講座の趣旨が理解できたならば違った解き方をすることができるようになっているはずです。

 復習は講座関連ホームページで配布したPDF形式のプレゼンデータを使って、結果よりも「どうしてこういう結論を導いたのか?」という考え方の部分を確認してください。
 倫理については普段の生活のなかで実践するように心がければ、自然と復習になってくるはずです。利害関係の衝突を見つけたときには講義で解説したテクニックを使って解決策を導いてみてください。
 なお、総合演習の回では事案を用いて検討する訓練を行います。このため、各回においては事前に事案説明を読んでおいてください。そして、そこに登場する者がどのような影響を受ける可能性があるのか、想像しておいてください。
成績評価方法
および評価基準
(最低達成基準を含む)
/Evaluation and grading
1 評価方法
 本科目は、期末試験で評価します。追試験は行いませんので、試験を受けられない方は救済できません。

2 評価基準
 以下の到達レベルをもって合格の最低基準とします。
 技術者が一定の行為(作為)をしたときに、若しくは何もしない(不作為)ときに、それによって不利益を受ける者は誰か、ならびにその不利益とはどのようなものなのかを予測・分析し、論理付けをしたうえで、解決案を出せること。  

3 具体的な成績の決定
 成績は上記基準の下、概ね次の割合になるように調整します。
 S 70点以上、かつ 上からの順位(%) <=10%
 A 70点以上、かつ   10% < 上からの順位(%) <= 40%
 B 70点以上、かつ 40% < 上からの順位(%)
 C 60点以上、70点未満
 不合格 60点未満
オフィスアワー:
授業相談
/Office hours
 uec-ji1bxm@dialectech.net にメールしてください。できれば、skypeで相談するようにしましょう。
学生へのメッセージ
/Message for students
1 講義総論  
 我が国では昭和から平成に移る頃から「自己責任」を重視する時代にはいりました。専門職技術者は、自分が担当する開発・生産活動において、他人に対し、社会に対し、国家に対し、ひいては世界に対し、自らの業務に責任を負うことが求められるようになりました。このような環境で、技術者は将来に渡り、他人・社会・国家・世界に対する責任をどう捉え、どう行動すればよいのかを、自ら考えていかなければなりません。
 本講義の目標は、自ら考えられる思考パターンを身につけることです。このため本講義では、技術者が行動する上で基礎となる技術者倫理に的を絞って検討を加えていきます。知識を学ぶのではなく、知恵を学ぶ講座です。

2 技術者倫理の各論について
 技術者倫理を学ぶにあたり、行為規範をなぞっていくという手法があります。行為規範はあくまでも過去に起こった事件に基づいてそれを分析したもので、戦術的なアプローチといえます。
 しかし、みなさんが社会で出会う問題は、初見のものばかりの筈です。そのようなときに、過去の事件で成功した行為規範が、必ずしも妥当な解決策を導くとは限りません。むしろ、過去の結論に縛られて、大きな見落としを招くかもしれません。
 この講義では、思考フレームワークに弁証法を用い、技術者倫理を戦略的に捉えます。これにより、初見の問題でも一定の妥当な解決策が見いだせるようにガイドします。
その他
/Others
 特にありません。
キーワード
/Keyword(s)
憲法、刑法、会社法、知的財産法(特許法、著作権法、商標法)、個人情報保護法、公益通報者保護制度、技術、倫理、哲学、ヘーゲル弁証法