シラバス参照 |
講義概要/Course Information |
科目基礎情報/General Information |
授業科目名 /Course title (Japanese) |
物理化学特論 | ||
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英文授業科目名 /Course title (English) |
Advanced Physical Chemistry | ||
科目番号 /Code |
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開講年度 /Academic year |
2020年度 | 開講年次 /Year offered |
全学年 |
開講学期 /Semester(s) offered |
後学期 | 開講コース・課程 /Faculty offering the course |
博士前期課程、博士後期課程 |
授業の方法 /Teaching method |
講義 | 単位数 /Credits |
2 |
科目区分 /Category |
大学院専門教育科目 - 専門科目Ⅱ | ||
開講学科・専攻 /Cluster/Department |
基盤理工学専攻 | ||
担当教員名 /Lecturer(s) |
山北 佳宏 | ||
居室 /Office |
東1-113号室 | ||
公開E-Mail |
yamakita 123 uec ac jp [123を@にしてください] | ||
授業関連Webページ /Course website |
qpcrbk.es.uec.ac.jp | ||
更新日 /Last updated |
2020/03/06 13:27:54 | 更新状況 /Update status |
公開中 /now open to public |
講義情報/Course Description |
主題および 達成目標 /Topic and goals |
物理化学は、物質の基本単位である分子を対象に、物理法則への興味で開発した実験・計算を機器分析に加えて行い、その性質を分子レベルで探究・開発する学問分野です。 本講義では、ナノ材料・高機能素材・生体関連物質・気相微量物質などの実験方法と理論計算法を、できる限り自身の経験をもとに最新の実例を交えて紹介し、学生諸氏が物理化学的な研究を展開するための基礎を学ぶことを目標にします。 最近の数10年で材料の分析手法は、分解能や感度の点で驚異的に進歩しました。分解能の面ではエネルギーと時間について不確定性原理の限界に達しており、感度の面では原子一つを検出することも分子一つだけの様子をリアルタイムで追跡することもできます。 一方で理論計算も、場合によっては実験結果を超えるほどの精度になり、実験をしなくても実在の系を正確に予測するための取り組みがされています。 |
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前もって履修 しておくべき科目 /Prerequisites |
特になし |
前もって履修しておくこ とが望ましい科目 /Recommended prerequisites and preparation |
化学概論第一 |
教科書等 /Course textbooks and materials |
■参考書(授業で適宜紹介します) ・量子化学,大野公一著,裳華房 ・新版すぐできる量子化学計算ビギナーズマニュアル,武次徹也,平尾公彦,講談社 ・新しい量子化学,A. Szabo, N. S. Ostlund,東京大学出版会 ・Introduction to Computational Chemistry, F. Jensen, Wiley など |
授業内容と その進め方 /Course outline and weekly schedule |
電子回路における電気抵抗、LEDにおける発光波長、生物における神経伝達のメカニズム、こういった現象をミクロに見るには、分子レベルの知識が必要になる。これまでは、実際に目に見えるモノの研究と、ミクロな原子・分子の研究では使われる言葉が違い、無関係に研究されることが多かった。しかし、実験手段や計算方法が格段に進歩し、物理・化学・地学・生物・医学・工学分野で横断的に発展する状況になっている。 本講義では、分子の世界から見た、光・電子に関する物理化学的な研究を、基礎から応用まで解説する。「光」は言うまでもなく日常生活から切り離せず、環境・省エネルギー問題にも強く関わっている。また、分子の世界から見ると、物質の色・化学結合・バンドギャップ・電子振動相互作用・励起状態のような性質は、すべて「電子」のかかわる状態が支配していることがわかる。そこで、光と分子の相互作用に重点を置きながら、電子の状態の調べ方を専門的に解説する。具体的には、レーザーやハイパフォーマンスコンピューティングをはじめとする最先端の技術を紹介し、量子力学に基づく最も基礎的な原理を理解しながら、分子軌道を計算するためのソフトウェアの使用法を学ぶ。 1.分子軌道法(1) シュレーディンガー方程式・変分原理 2.分子軌道法(2) 平均場近似・SCF法 3.分子軌道法(3) 電子相関・DFT 4.分子軌道法(4) ソフトウェア(Gaussian 16等)の実際 5.ポテンシャルランドスケープ: 分子の構造と反応性探索 6.光と分子の相互作用(1) 時間依存シュレーディンガー方程式 7.光と分子の相互作用(2) 摂動法 8.選択律と群論(1) 対称種 9.選択律と群論(2) 基準振動の数え方 10.振動状態: 赤外・ラマン分光 11.振電相互作用: レーザー分光 12.電子状態: 電子吸収・電子分光・電子物性 13.化学反応動力学: 質量分析・イオンイメージング 14.ナノ科学(1) 分子線・真空技術 15.ナノ科学(2) 表面・界面・環境 The lecture is type II if there is a Japanese student who wish Japanese explanations. Written materials are given in Japanese with English annotations. |
実務経験を活かした 授業内容 (実務経験内容も含む) /Course content utilizing practical experience |
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授業時間外の学習 (予習・復習等) /Preparation and review outside class |
研究活動を熱心に行うと、知識を有機的につなげ、深く考えることができるようになります。講義のみならず、学会発表や論文投稿を大切にしてください。 |
成績評価方法 および評価基準 (最低達成基準を含む) /Evaluation and grading |
授業への出席、レポート、期末試験等による。 |
オフィスアワー: 授業相談 /Office hours |
火曜5限。時間外でも相談に応じられますので、気軽に訪ねてください。授業の後にも受け付けます。 |
学生へのメッセージ /Message for students |
私は大学院生の頃、有機導電性物質や導電性高分子の研究をしていましたが、分子1つだったらどうなるのか?という疑問に行きつきました。今日では、分子を単位とする物理化学の研究が進み、分子1つのみならずそのイオン・集合体・固体吸着状態などきわめて広い範囲で「分子」を「見て」「操る」ことができるようになり、こういった分野は分子科学とも呼ばれるようになりました。こういった緻密な学問が、レーザー・電子素子・計算機などのテクノロジーを支える知識・技術として華々しい未来をもたらす原動力となると考えられ、生体機能やものづくりへとひろがりを見せつつあります。 |
その他 /Others |
ギリシャ時代から発展してきた化学は、物質観や哲学に大きな影響を与えてきました。いまでも、生命の理解、素材開発、テクノロジーを通じて社会に変革をもたらしています。そして今後、地球上のエネルギー枯渇や環境問題、難病の克服などの諸問題に対して、具体的解決策を与えると期待されています。わが国は、京都議定書を採択したCOP3の開催国であり、省エネルギー技術について世界のリーダーと言えるでしょう。多くの産業界で、世界一CO2排出の少ない効率的な工程が確立されています。こういった状況を支える有力な学問のひとつが物理化学による分子科学であり、材料開発・理論計算などで多くのノーベル賞が日本人に与えられていることからも分かるように、とても魅力的な分野を形成しています。 |
キーワード /Keyword(s) |
選択律、群論、量子化学計算、Gaussian、分子線実験、赤外ラマン、電子分光、質量分析、基準振動、真空技術、レーザー分光、走査トンネル顕微鏡(STM)、原子間力顕微鏡(AFM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、核磁気共鳴(NMR)、電子スピン共鳴(ESR) |