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講義概要/Course Information |
科目基礎情報/General Information |
授業科目名 /Course title (Japanese) |
現代数学入門B | ||
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英文授業科目名 /Course title (English) |
Introduction to Modern Mathematics B | ||
科目番号 /Code |
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開講年度 /Academic year |
2011年度 | 開講年次 /Year offered |
2 |
開講学期 /Semester(s) offered |
前学期 | 開講コース・課程 /Faculty offering the course |
情報理工学部 |
授業の方法 /Teaching method |
講義 | 単位数 /Credits |
2 |
科目区分 /Category |
総合文化科目 - 理工系教養科目 | ||
開講類・専攻 /Cluster/Department |
情報理工学部 | ||
担当教員名 /Lecturer(s) |
石田 晴久 | ||
居室 /Office |
東1-501 | ||
公開E-mail |
ishida@im.uec.ac.jp | ||
授業関連Webページ /Course website |
なし | ||
更新日 /Last update |
2011/04/13 14:59:12 | 更新状況 /Update status |
公開中 /now open to public |
講義情報/Course Description |
主題および 達成目標(2,000文字以内) /Themes and goals(up to 2,000 letters) |
(a) 主題 19世紀のディリクレに始まる解析数論の古典的話題の中からディオファンタス近似論と不定方程式論の入門的講義を行なう.特に高校でも学んだ数学的帰納法や背理法がどのように有効に活用されるかを示す.解析数論とは解析的手法,つまり極限論,微分積分学,実解析学,複素関数論等における成果を援用して研究する数論の一分野である.このうち,ディオファンタス近似とは無理数を有理数で定量的に近似すること,即ち有理数と無理数の差をなるべく具体的な不等式で評価することである.特に有理数の稠密性を定量的に示すことで精密化する.不定方程式とは未知数の個数が方程式の個数よりも多い方程式のことである.1994年にワイルスによって劇的に解決されたフェルマー予想のように,不定方程式に一般的解法は当然ないが,或る種の不定方程式の整数解の有限性をディオファンタス近似で示せる(トゥエ,1909年).また最も基本的なペル方程式をブラウンカー(1657年)に負う連分数展開で解く.最後に,特に3次のフェルマー方程式が整数解をもたないことを(2次体の数論でなく)オイラーのアイデアを完全にしたルジャンドルらによる方法で示す. (b) 達成目標 初等数論や組み合わせ論の方法と解析的手法とを融合させることにより得られる数々の美しい定理とその証明を鑑賞し,微分積分学で学んだ事項,例えば高次導関数に関するライプニッツの公式がどのように役立つかを見る.数論における解析的手法の初歩を学習し,それを離散数学や数論的話題で活用できる能力を養うのが目的である. |
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前もって履修 しておくべき科目(1,000文字以内) /Prerequisites(up to 1,000 letters) |
微分積分学第一,解析学 |
前もって履修しておくこ とが望ましい科目(1,000文字以内) /Recommended prerequisites and preparation(up to 1,000 letters) |
なし |
教科書等(1,000文字以内) /Course textbooks and materials(up to 1,000 letters) |
教科書:鹿野 健 著「解析数論」(シリーズ新しい応用の数学18,教育出版) ,特に第2章と第3章 参考書:高木 貞治 著「初等整数論講義 第2版」(共立出版) G. H. ハーディ・E. M. ライト 共著 / 示野 信一・矢神 毅 共訳「数論入門I」(シュプリンガー・ジャパン) 武隈 良一 著「ディオファンタス近似論」(数学選書,槙書店) D. ドゥヴェルネ 著 / 塩川 宇賢 訳「数論 - 講義と演習 -」(森北出版) 塩川 宇賢 著「無理数と超越数」(森北出版) W. M. Schmidt, Diophantine Approximation, Lecture Notes in Math., No. 785, Springer-Verlag, 1980. L. J. Mordell, Diophantine Equations, Pure & Appl. Math., Vol. 30, Academic Press, 1969. |
授業内容と その進め方(2,000文字以内) /Course outline and weekly schedule(up to 2,000 letters) |
(a) 授業内容(予定) 第1回:ファレイ数列とその性質 第2回:ディリクレの鳩ノ巣原理とその応用,有理数による近似,フルヴィッツの定理 第3回:非斉次のディオファンタス近似:チェビシェフの定理 第4回:同時近似の問題:ディリクレの定理,クロネッカーの定理 第5回:代数的数の近似:リューヴィルの定理,代数的数の近似位数の評価 第6回:代数的数の近似:トゥエの定理,ロスの定理,ベイカーの定理の紹介 第7回:代数的数の近似:トゥエの定理の証明 第8回:ディオファンタス近似における計量定理:ヒンチンの定理,ダフィン・シェーファーの定理 第9回:ディオファンタス近似における計量定理:ダフィン・シェーファーの定理の証明 弟10回:ディオファンタス近似のいくつかの応用例(極限値の計算,超越数の存在など) 弟11回:不定方程式の例,マチヤセヴィッチの定理,不定方程式に関するトゥエの定理 弟12回:トゥエの定理のディオファンタス近似による証明 弟13回:ペル方程式とその連分数展開による解法 第14回:2次と4次のフェルマー方程式 第15回:3次のフェルマー方程式 (b) 授業の進め方 講義の前半(第1回-9回)では,ディオファンタス近似論の基本事項をなるべく証明を与えながら解説し,不定方程式への応用を念頭に説明する.次に,弟10回でそれらを有名な上極限・下極限の求値問題等に応用する. 後半(第11回-15回)においては,代表的かつ基本的な不定方程式の整数解の個数をディオファンタス近似論の応用問題にし,特にペル方程式(本当はブラウンカー方程式と呼ぶべきもの)の基本解を求める殆んど唯一の連分数展開による解法を紹介する.更に有名なフェルマー方程式について初等的に扱える3次,4次の場合に自然数解が存在しないことを代数的数論によらない(少し複雑な)古典的方法で示す. |
実務経験を活かした 授業内容 (実務経験内容も含む) /Course content utilizing practical experience |
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授業時間外の学習 (予習・復習等)(1,000文字以内) /Preparation and review outside class(up to 1,000 letters) |
新しい事柄が毎回多く登場するので,次回の授業までにその回の内容を復習することは不可欠です.復習は証明を追うことよりも寧ろ教科書の定理が適用できる具体例を自作して下さい. |
成績評価方法 および評価基準 (最低達成基準を含む) (1,000文字以内) /Evaluation and grading (up to 1,000 letters) |
(a) 評価方法 学期末にレポート課題を与えて,その成果により主な評価を行なう予定である. (b) 評価基準 以下の到達レベルをもって合格の最低基準とする. (1) ディリクレの鳩ノ巣原理が理解できている. (2) 或る実数が無理数であることをディオファンタス近似で証明できる. (3) 簡単な不定方程式を解くことができる. |
オフィスアワー: 授業相談(1,000文字以内) /Office hours(up to 1,000 letters) |
東1号館,501号室,月曜,5時限を原則とします.但し,この時間に都合がつかない場合には,数日前に電子メールで来室予約をとった上で居室を訪問されたい.電子メールでの質問は固くお断りします.当該授業の内容以外の質問や相談には応じませんので悪しからず. |
学生へのメッセージ(1,000文字以内) /Message for students(up to 1,000 letters) |
数学の深い結果は大道具を使って得られることよりも一見単純な考察を幾度も積み重ねることで導かれることが多い.つまり,それらは数学者達が長い時間をかけて獲得してきた英知の結晶である.証明を追うことはそれ程難しくないだろうが,そのアイデアの本質を見抜くのは容易ではないであろうし,それを追究し自らの考察を加える努力を惜しまなければ,この授業で何か意義あるものが得られるかと思う.数論はガウスのよく引用される名言「数学は諸科学の女王であり,数論は数学中の女王である」にもあるように,いつの時代も数学の中心地で,数論の難問を解決する努力が数学を大きく発展させたといえよう.それは20世紀後半の天才グロタンディークの超人的な成果(EGA, SGA等)を鑑みても明らかである.この授業が数学に興味をもって頂く1つのきっかけになれば幸いであるし,長い時間をかけて深く考えることの大切さとその後に訪れる理解の喜びを体験できれば素晴らしい. |
その他 /Others |
ガウスの素数定理などの素数分布論には一切言及しない.開講学期の関係で複素関数論的手法が使えないからである.それらに関心のある諸君には次の文献を紹介しておく. [1] 松本 耕二 著「リーマンのゼータ関数」(開かれた数学1,朝倉書店) [2] 本橋 洋一 著「解析的整数論I-素数分布論-」(朝倉数学大系1,朝倉書店) [3] D. Zagier, Newman's short proof of the prime number theorem, Amer. Math. Monthly, Vol. 104 (1997), 705-708. |
キーワード /Keywords |
ファレイ分数,鳩ノ巣原理,代数的数,超越数,近似位数,代数的数の高さ,ペル方程式,基本解,正則連分数展開,フェルマー方程式,原始解,無限降下法,平方剰余の相互法則,トゥエの剰余定理,三角数 |