シラバス参照 |
講義概要/Course Information |
科目基礎情報/General Information |
授業科目名 /Course title (Japanese) |
科学技術と人間 | ||
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英文授業科目名 /Course title (English) |
Science,Technology and Human | ||
科目番号 /Code |
HSS511z | ||
開講年度 /Academic year |
2020年度 | 開講年次 /Year offered |
3/4 |
開講学期 /Semester(s) offered |
前学期 | 開講コース・課程 /Faculty offering the course |
情報理工学域 |
授業の方法 /Teaching method |
講義 | 単位数 /Credits |
2 |
科目区分 /Category |
総合文化科目 | ||
開講学科・専攻 /Cluster/Department |
情報理工学域 | ||
担当教員名 /Lecturer(s) |
○高橋(幸)・○田中(基)・○長野・○須藤・○関谷 | ||
居室 /Office |
なし | ||
公開E-Mail |
ktakahasi◎uec.ac.jp [高橋幸平] 〔◎を@に読みかえてください〕 | ||
授業関連Webページ /Course website |
なし | ||
更新日 /Last updated |
2020/04/25 13:43:18 | 更新状況 /Update status |
公開中 /now open to public |
講義情報/Course Description |
主題および 達成目標 /Topic and goals |
【講義の主題】 科学技術をめぐる問いを通して人間存在について考える。古代から近代・現代へ、また、西洋と日本にわたり、自然・環境との関わりを含めて、複数の講師がそれぞれの専門分野の研究成果・知見や実務経験に基づき、問いを立てる。第1部では古代ギリシア思想を専門とする関谷が西洋の古代から近代において、第2部では日本思想(神道・仏教)を専門とする長野が古代日本において、第3部では西洋近代の実存思想・宗教学を専門とする須藤が近現代において、第4部では大手電機メーカーで環境対策の実務を行ってきた田中が現代において、それぞれ問いの材料と考察の過程を示す。 ※下記「授業内容とその進め方」を参照のこと。 【講義の目標】 各講師が設定した問題について、講義で示された資料・文献・教科書などをふまえた上で、受講者各自が考察し、その内容を論述して示すことを目標とする。 |
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前もって履修 しておくべき科目 /Prerequisites |
特に必要としない |
前もって履修しておくこ とが望ましい科目 /Recommended prerequisites and preparation |
特に必要としない |
教科書等 /Course textbooks and materials |
勢力尚雅編『科学技術の倫理II』(梓出版社,2015,ISBN978-4-87262-036-8) ※第4部参考書 |
授業内容と その進め方 /Course outline and weekly schedule |
講義形式。5名の講師がオムニバス形式で講義を行う。全体は担当講師ごとの4部にわかれる。 【ガイダンス】担当講師:高橋幸平・計1回 ○第1回 『講義全体の説明』 講義の概要、課題の提出方法、成績評価ほかの注意。※受講希望者は必ず出席して、内容を確認すること。 『科学技術ということば』 現代の「科学技術」の源を古代ギリシアに遡り、特にアリストテレスに拠って、関連する語の意味するところを探る。 【第1部】担当講師:関谷雄磨・計6回 『科学技術および現代社会を考える―価値・欲望・快楽・幸福をめぐって―』 われわれ人間は科学技術を手に入れたことによって、生活を便利に、快適にすることに成功しました。さらには、単に便利な生活のみならず、「豊かな」生活を送ることも可能になりました。しかし、「豊かな」生活を送っているはずのわれわれは、果たして幸福な(よい)人生を送れているのでしょうか。私の担当回では、この問題についていくつかの視点から考察します。なお、「結論」の設定された講義ではなく、基本的に問題提起型の内容なので、自己の世界観や感性に照らし合わせて問題を一緒に考えながら受講してください。 ○第2回『科学技術を歴史的源泉から考える(ベイコン、デカルト)』 科学技術がどのような「前提」のもとで構築されてきたのか考察します。それは、例えば「人間中心主義」や「二元論的世界観」といったものです。これらによって、科学技術(および現代社会)が決定的に方向づけられていることを確認します。 ○第3回『「技術」とはどのようなものであるべきなのかを考える(プラトン)』 それらの「前提」によって基礎づけられた現代の科学技術のあり方を、プラトンの技術観(「真に技術と呼ぶべきものは善悪の価値判断を可能とする」)を参照しながら、批判的に考察します。 ○第4回『科学技術がもたらした医療倫理上の問題を考える(ミル、カント)』 前講を受けて、具体的実例として医療倫理上の諸問題を取り上げながら、科学技術と価値判断の関係性の問題についてより広範な視点から考察します。 ○第5回『「欲望」について考える(プラトン、カリクレス)』 科学技術と価値判断の関係性の問題は、つまるところ人間がさまざまな願望(欲望)を持っていることに起因します。そこで、人間は願望(欲望)とどのように向かい合うべきなのか(幸福を得るためには、願望(欲望)を際限なく満たすべきなのか、あるいは限度を設けるべきなのか)という問題について、プラトンを参照しながら考察します。 ○第6回『「享楽(快楽)主義」について考える(キュレネ学派、エピクロス)』 われわれの願望(欲望)の多くは、根本的には「快楽(=人生における楽しさ全般、満足感)」を導き手として生じます。そこで、人間は「快楽」への願望(欲望)とどのように向かい合うべきなのか(幸福になるためには、どのような「快楽」への欲望をどのように満たすべきなのか)という問題について考察します。 ○第7回『科学技術がもたらした大量消費社会を考える(キュニコス学派)』 われわれは、これまで考察してきたことに基礎づけられた大量消費社会に生きています。では、この「豊かな」社会は、われわれが幸福な(よい)人生を送ることを可能にするでしょうか。物質的豊かさへの志向と幸福との関係について考察します。 【第2部】担当講師:長野邦彦・計3回 『自然とかかわる技術について―古代日本における祭祀の諸相から―』 第2部では、古代日本における「自然とかかわる技術」について紹介します。そのことをきっかけに、現代の日本において、科学技術と人間との関係に関して理解する際に暗黙の前提となっている思想の枠組みについて、あるいは現代の考え方とは異なる視点について考察します。 〇第8回『古い神祀り―人間を生みだした存在としての自然=神―』 古代日本において、人間の思い通りにならない自然の力は「神」として捉えられ、それと向き合う技術として「祭祀」がありました。そして古いタイプの「神=自然」観においては、神によって人間が生み出され、生かされていると考えられていたことを紹介し、それと比較しつつ現代日本における自然観・技術観を見つめ直します。 〇第9回『新しい神祀り―自然を生む神―』 国家の確立に伴い、『古事記』や『日本書紀』のような歴史書が編纂され、新しい神および祭祀観念が成立しました。それは、自然としての神を生み出したより尊貴な神が存在し、その新たな神の子孫である天皇が日本全国の祭祀を統括するというものです。このような見方を参照しつつ、再度現代日本における自然観・技術観について考察します。 〇第10回『自然と人間との境界について考える―オホクニヌシ神話を参照しつつ―』 祭祀は何らかの仕方で自然の領域と人間のそれとの間に区切りを入れる営為ですが、『古事記』のオホクニヌシ神話にはより自然と無媒介に接するあり方が描かれています。それを紹介しつつ、現代日本における自然と人間とのかかわり、および技術の問題について考察します。 【第3部】担当講師:須藤孝也・計3回 『キルケゴールの人間理解に学ぶ』 人間が実存するというのはどういうことか、人間が時間のなかで成長・発展するというのはどういうことか。実存思想家の代表としてキルケゴールをピックアップし、その議論を参照しながら、人間理解を深める。近代科学がしばしば看過する人間存在の諸側面を確認することで、近代科学および科学技術のありうべき形を模索する一助となすことを目的とする。 〇第11回『義務の倫理学と徳や霊性の倫理学』 カントの義務論について概観した上で、これとは別系統の倫理学として徳倫理学およびキリスト教倫理学があることについて説明する。また「時間」や「発展」をキーワードに、近代科学と前者の近さ、および近代科学と後者の遠さについて確認する。 〇第12回『キルケゴール(1):美的人間から倫理的人間へ』 キルケゴール思想の概要について説明する。また、キルケゴールが言う「美的人間」というものはどういう存在なのかについて確認した後、これがさらに「イロニー」を経て「倫理的人間」へと転じていく様相について説明する。 〇第13回『キルケゴール(2):倫理的人間から宗教的人間へ』 「倫理的人間」が「フモール」を経て「宗教的人間」へと転じていく様相について説明する。最後に、「実存する存在」として人間を理解することや、弁証法的に発展する存在として人間を理解することの現代的意義について考察する。 【第4部】担当講師:田中基寛・計2回 『パラダイムを扱うというアプローチについて―環境・社会課題と人間―』 科学技術が内包する「専門化」が生んだ「環境問題」は20世紀後半~末に世界的な課題となり、「地球の有限性」を示した。21世紀初頭、環境問題は「社会課題の一つ」となり、社会課題は「SDGs(国連の「持続可能な開発目標」)」という世界合意に結実した。ここに登場してきた「パラダイムを扱うというアプローチ」を含む、「パラダイム」を巡る「実践の知」について考察する。 〇第14回『環境問題とクーンのパラダイム』 トーマス・クーンの「パラダイム」と大橋力に拠って、科学技術が「高度専門化社会」を生み、専門のはざまに「環境問題」が生じるという視点を提示する。企業の社会的責任として扱われてきた環境問題・社会課題への対処をこの視点から俯瞰し、さらに、科学者倫理、専門家と非専門家との対話、科学技術の社会的な制御などについて、その有効性を問い直す。 〇第15回『社会課題と個人をつなぐアプローチとしてのパラダイム』 「社会課題」へ対処する推進力・動因は、「個人は世界と直接つながっている」感覚の広がりではないだろうか。このような見通しから、日本のSDGsの現場で起こっている「パラダイムを扱うというアプローチ」を紹介する。 |
実務経験を活かした 授業内容 (実務経験内容も含む) /Course content utilizing practical experience |
第4部を担当する田中基寛講師は、三菱電機株式会社にて環境行政を司る本社共通部門(環境推進本部)に勤務(2004年度~2017年度)。「環境報告(環境に関する企業による情報開示)」の編集長ほか環境関連広報を担当した。2017年度~2019年度は同社伊丹製作所において環境マネジメントシステムの国際規格 ISO14001:2015年版を導入した。また、SDGsへの理解を深める事業所内教育開発に従事し、2019年からは日本における「SDGs」の現場活動の取材を始めている。この間の環境・社会課題に関わる社会的勢力の興隆・拡大によって、企業が要求された役割及び説明責任、会社が選択した行動に当事者として関わってきた。2020年からは本社・環境推進本部に勤務。以上の実務経験を踏まえて、講義を行う。 |
授業時間外の学習 (予習・復習等) /Preparation and review outside class |
各回の講義内容について復習に努めること。 予習として、各部の課題レポートに向けて準備を進めること。 そのほか、各講師の指示に従うこと。 |
成績評価方法 および評価基準 (最低達成基準を含む) /Evaluation and grading |
【成績評価方法】 {1}4名の講師(関谷・長野・須藤・田中)がそれぞれレポート(論述形式)を課す。 {2}課題内容・期限・提出先・注意事項などの詳細は、各講師それぞれの担当回のなかで示す。 {3}各講師が課すレポート(4回とは限らない)をすべて提出しなければ、「不可(D)」とする。 {4}レポートの総計で成績を評価する。 {5}配点の比率は、担当回数による(関谷2:長野1:須藤1:田中1)。 【評価基準】 {1}講義の内容を理解している。 {2}講義の内容ついて自ら考察している。 {3}理解した内容・自ら考察したことを明確に論述している。 |
オフィスアワー: 授業相談 /Office hours |
非常勤講師によるオムニバス講義のため、特定の居室・オフィスアワー等は設定できない。 講義全体にかかわる質問は、高橋幸平が対応する。上記公開E-Mailまで連絡すること。その際は、氏名・学籍番号・科目名「科学技術と人間」を明記すること。 個別の授業内容や課題などについての質問は、各講師が対応する。講義の前後などに直接相談すること。 |
学生へのメッセージ /Message for students |
履修希望者は第1回に必ず出席し、講義の説明を聞いて内容を確認すること。 |
その他 /Others |
なし |
キーワード /Keyword(s) |
科学技術 人間存在 倫理 実存 自然 環境 SDGs(国連の「持続可能な開発目標」) 社会課題 パラダイムシフト 幸福 |