シラバス参照

講義概要/Course Information
2024/06/20 現在

科目基礎情報/General Information
授業科目名
/Course title (Japanese)
科学技術と人間
英文授業科目名
/Course title (English)
Science,Technology and Human
科目番号
/Code
HSS507z
開講年度
/Academic year
2024年度 開講年次
/Year offered
3/4
開講学期
/Semester(s) offered
前学期 開講コース・課程
/Faculty offering the course
情報理工学域
授業の方法
/Teaching method
講義 単位数
/Credits
2
科目区分
/Category
総合文化科目
開講類・専攻
/Cluster/Department
情報理工学域
担当教員名
/Lecturer(s)
○関谷・○田中(基)・○近藤・○高橋(幸)
居室
/Office
なし
公開E-mail
/e-mail
sekiya.y@uec.ac.jp(関谷雄磨)
授業関連Webページ
/Course website
課題レポート提出および一部遠隔授業回にwebclassを使用します。
更新日
/Last update
2024/03/11 01:44:39 更新状況
/Update status
公開中
/now open to public
講義情報/Course Description
主題および
達成目標(2,000文字以内)
/Themes and goals(up to 2,000 letters)
【講義の主題】
「科学技術」というキーワードを通して、人間存在について考えるオムニバス講義です。主に哲学・倫理思想の観点から、古代・近代・現代、また、西洋・日本にわたって、4名の講師がそれぞれの専門分野の知見や実務経験に基いて、問いを立て、科学技術と人間存在について考察してゆきます。
本講座は、人間存在とは何か―倫理・社会の内において、また、自然・環境の内において、人が生きているとはどういうことか―を問う講義ですので、「正解」を定めて導き出したり、「知識」として修得することを目指す講義ではありません。受講生のみなさんは、各講師が示す考察の材料や考察の過程を踏まえつつ、各講師が立てた問いについて、自ら考えてみて下さい。

第1部:西洋古代・近代 …関谷雄磨(古代ギリシア思想)※全6回、高橋幸平(古代ギリシア思想)※全1回
第2部:日本古代・近現代...小濵(近藤)聖子(日本倫理思想史(仏教)、研究倫理)※全4回
第3部:現代 …田中基寛(三菱電機株式会社、「環境と経営」の実務)※全4回

※各回の具体的内容については、下記「授業内容とその進め方」を参照※

【講義の目標】
各講師が設定した問題について、講義で示された資料・文献・参考書などを用いて、受講者各自があらためて問いを立て、考察を深め、考察した内容を論述して示すことを目標とします。
前もって履修
しておくべき科目(1,000文字以内)
/Prerequisites(up to 1,000 letters)
特に必要としない
前もって履修しておくこ
とが望ましい科目(1,000文字以内)
/Recommended prerequisites and preparation(up to 1,000 letters)
特に必要としない
教科書等(1,000文字以内)
/Course textbooks and materials(up to 1,000 letters)
【参考書】第3部(田中講師担当回)
勢力尚雅編『科学技術の倫理II』(梓出版社,2015,ISBN978-4-87262-036-8)
授業内容と
その進め方(2,000文字以内)
/Course outline and weekly schedule(up to 2,000 letters)
4名の講師がオムニバス形式で講義を行う。全体は以下の3部に分かれる。

第1部『科学技術および現代社会を考える―価値・欲望・快楽・幸福をめぐって―』
<担当講師:関谷雄磨(第1、3~7回、全6回)、高橋幸平(第2回)>
われわれ人間は科学技術を手に入れることによって、生活を便利に、快適にすることに成功しました。さらには、単に便利な生活を送るのみならず、「豊かな生活をエンジョイ」することも可能になりました。しかし、そのような生活を送っているはずのわれわれは、果たして本当に幸福な(よい)人生を送っているのでしょうか。私の担当回では、この問題についていくつかの視点から考察します。なお、教科書は使用せず、配布プリントに基づいて講義を行います。

〇第1回『講義全体の説明および導入』
・講義の概要、課題の提出方法、成績評価などの説明。※履修希望者は必ず出席して内容を確認してください。
・導入(『科学技術を歴史的源泉から考える』:ベーコン、デカルト)
科学技術がどのような「前提」のもとで構築されてきたのか考察します。それは、例えば「人間中心主義」や「二元論的世界観」といったものです。科学技術(および現代社会)がこれらの世界観によって決定的に方向づけられていることを確認します。

○第2回『科学技術ということば』(※オンデマンドで実施予定)
現代の「科学技術」の源を古代ギリシアに遡り、特にアリストテレスに拠って、関連する語の意味するところを探る。

○第3回『「技術」とはどのようなものであるべきなのかを考える:プラトン』
前講を受けて、それらの「前提」によって基礎づけられる現代の科学技術のあり方を、プラトンの技術観(「真に技術と呼ぶべきものは善悪の価値判断を可能とする」)を参照しながら、批判的に考察します。

○第4回『科学技術がもたらした医療倫理上の問題を考える:ミル、カント』
前講を受けて、具体的実例として医療倫理上の諸問題を取り上げながら、科学技術と価値判断の関係性の問題についてより広範な視点から考察します。

○第5回『「欲望」について考える:プラトン』
科学技術と価値判断の関係性の問題は、つまるところ人間がさまざまな願望(欲望)を持っていることに起因します。そこで、人間は願望(欲望)とどのように向かい合うべきかという問題について、プラトンを参照しながら考察します。

○第6回『「享楽(快楽)主義」について考える:キュレネ学派、エピクロス』
われわれの願望(欲望)の多くは、「快楽(=人生における楽しさ全般、満足感)」への欲求として生じます。そこで、人間は「快楽」とどのように向かい合うべきなのかという問題について考察します。

○第7回『科学技術がもたらした大量消費社会を考える:キュニコス学派』
われわれは、これまで考察してきたことに基礎づけられた大量消費社会に生きています。では、この「豊かな」社会は、われわれが幸福な(よい)人生を送ることを可能にするでしょうか。物質的豊かさへの志向と幸福との関係について考察します。


第2部『自然とかかわる技術について─古代日本における祭祀の諸相から─』
<担当講師:小濵(近藤)聖子・全4回>
第2部では、日本における科学技術のあり方について理解を深めるうえで、前提となっている思想的な背景に関する講義を行います。古代日本では自然とかかわる技術としてカミ祀りが行われていたことや、近代日本の科学者が科学を宗教的な営みとして理解しようとしていたことを紹介し、最後に現代の科学者には科学技術発展のためにELSI/RRIの理解が求められていることをとりあげます。

〇第8回『自然とかかわる技術としてのカミ祀り』
古代日本におけるカミ祀りが、自然とかかわる技術であったことについて紹介します。古代の自然観・人間観・技術観を学び、それが現代日本にも受け継がれていることを示します。それによって、受講者が科学技術の捉え方の視野を広げることを目指します。

〇第9回『科学(者)と仏教』
科学の営みは、科学者という主体が世界という客体を観察することによって始まります。ここに主客という二分化された図式が成立します。ところで、科学者が世界全体を追究しようとするなら、主体となっている自分自身についても考察の対象とせざるを得ません。
この回では、近代日本の科学者が自身の研究を仏教的な「行」として捉えていった例をとりあげ、科学研究という行為について考察します。

〇第10回『現代の科学と宗教―仏教の例から―』
アジアから欧米にも広がっている仏教は、世界の本質を理解するための探究方法であるという点において、科学との共通点を論じられることが珍しくありません。この回では、ビジネスや医療でも取り入れられているマインドフルネスや禅について取り上げ、現代に生きる人間が科学と仏教や宗教との関わりをどのように捉えることができるのか考察します。

〇第11回『研究倫理の教育とELSI/RRI』
現代の科学者には、自分がどのような研究をしたいか、できるか、すべきかといったことを多角的に考えることが求められます。この回では、担当者の研究倫理に関する実務者としての経験を踏まえ、現在我が国で推進されている研究倫理教育や、ELSI(Ethical, Legal and Social Issues: 倫理的・法的・社会的課題)、RRI(Responsible Research and Innovation: 責任ある研究・イノベーション)の考え方の普及について紹介します。


第3部『パラダイムを扱うというアプローチについて—環境・社会課題と人間—』
<担当講師:田中基寛・全4回>
『パラダイムを扱うというアプローチについて—環境・社会課題と人間—』
科学技術が内包する「専門化」が生んだ「環境問題」は20世紀後半~末に世界的な課題となり、「地球の有限性」を示した。21世紀初頭、環境問題は「社会課題」を取り込んで拡大し「SDGs(国連の「持続可能な開発目標」)」という世界合意に結実した。そしてただ今は「ESG投資」コンセプトによる「『社会課題解決』の経済活動への内部化」が進み、その実効性の検証フェーズに突入している。
こうした人間活動の進化を俯瞰するとともに、その過程で登場してきた「パラダイムを扱うというアプローチ」を含む、「パラダイム」を巡る「実践の知」について考察する。

〇第12回『クーンのパラダイムと大橋のアプローチ』
トーマス・クーンの「パラダイム」と大橋力に拠って、科学技術が「高度専門化社会」を生み、専門のはざまに「環境問題」が生じるという視点を提示する。科学技術に内在する「もの」と「こころ」の分断や「専門分化」への動機に対し大橋の提起したアプローチの現代における可能性を考察する。

○第13回『科学技術を用いるものが今から考えるべきことは何か』
上記のテーマに関する問い掛けに対して、倫理学者から考察のためのさまざまな視点・論点が示され、参考書に掲げた勢力尚雅編『科学技術の倫理II』がまとめられた。今回はその内容に拠りながら科学技術の専門家と市民との関係を中心に、現在の状況や問題を考察する。

○第14回『環境問題の社会的な制御-気候変動とTCFD提言』
企業にとっての環境問題の位置づけは21世紀最初の四半世紀の間で劇的に変化していく。企業の「社会的責任」として扱われてきた環境問題・社会課題は、「ESG投資」のコンセプトによる「外部不経済の内部化」圧力として現実に企業を動かすことに作用している。この質的変化の過程を踏まえて「科学の社会的な制御」の戦略性と科学の問題の解決への寄与について考察する。

〇第15回『社会課題と個人をつなぐアプローチとしてのパラダイム』
「社会課題」へ対処する推進力・動因は、「個人は世界と直接つながっている」感覚の広がりではないだろうか。このような見通しから、日本のSDGsの現場でも適用が試みられている「パラダイムを扱うというアプローチ」を紹介し、脱専門分化への道筋と、専門家と非専門家の共創について考察する。
実務経験を活かした
授業内容
(実務経験内容も含む)
/Course content utilizing practical experience
第2部担当の小濵(近藤)聖子講師は、お茶の水女子大学大学院にて日本倫理思想の研究とともに研究倫理の教育活動を行い、2020年7月からは国立がん研究センター東病院や東京大学医学部にて医学系研究の倫理審査に関する実務に従事している。これらの実務経験を踏まえて講義を行う。

第3部を担当する田中基寛講師は、三菱電機株式会社にて環境行政に従事(2004年度~2020年度)。「環境報告(環境に関する企業による情報開示)」の編集長、グローバル環境マネジメントシステムの構築を担当した。この間2017年度~2019年度は同社伊丹製作所にて国際規格ISO14001:2015年版を導入。2021年4月からはサステナビリティ推進部に異動し、気候変動に関してTCFDを通じたガバナンス・リスク管理プロセスを構築、サーキュラーエコノミー推進に関して、三菱電機-東京大学社会連携講座(持続可能な循環経済型未来社会デザイン講座)参画や廃プラスチックの有効利用率を向上させる資源循環DXソリューション「RaaS」(Recycle as a Service)のサポート等、複数の推進プロジェクトに従事。2023年10月からは、サステナビリティ・テックによる社会課題解決型事業創出プロジェクト(GIST:Global Initiative for Sustainable Technology)に参画。以上の実務経験を踏まえて講義を行う。
授業時間外の学習
(予習・復習等)(1,000文字以内)
/Preparation and review outside class(up to 1,000 letters)
各回の講義内容について復習に努めること。
予習として、各部の課題レポートに向けて準備を進めること。
そのほか、各講師の指示に従うこと。
成績評価方法
および評価基準
(最低達成基準を含む)
(1,000文字以内)
/Evaluation and grading
(up to 1,000 letters)
【成績評価方法】
[1]3名の講師(関谷・小濵・田中)がそれぞれレポート(論述形式)を課す。
[2]課題内容・期限・提出先・注意事項などの詳細は、各講師それぞれの担当回のなかで示す。
[3]各講師が課すレポートをすべて提出しなければ、「不可(D)」とする。
[4]レポートの総計で成績を評価する。配点の比率は、担当回数による(関谷3:小濵2:田中2)。
[5]レポートの提出は学内のWebClassを用いて電子的に行うので、履修者は必ずWebClassに登録すること。

【評価基準】
[1]講義の内容を理解している。
[2]講義の内容について自ら考察している。
[3]理解した内容・自ら考察したことを明確に論述している。
[4]そのほか、各講師ごとに個別の評価基準等を示す。それぞれの課題や基準等を満たすこと。
オフィスアワー:
授業相談(1,000文字以内)
/Office hours(up to 1,000 letters)
○講義全体にかかわる質問は、関谷が対応する。
○個別の授業内容や課題などについての質問は、各講師が対応する。
○対面授業では、講義の前後に各講師が質問に対応する。
○講師にE-Mailなどで連絡する際は、氏名・学籍番号・科目名「科学技術と人間」を明記すること。
学生へのメッセージ(1,000文字以内)
/Message for students(up to 1,000 letters)
第1回のガイダンスで全体の説明を行うので、履修希望者は必ず受講して内容を確認してください。
その他
/Others
特になし
キーワード
/Keywords
科学技術 人間存在 倫理 実存 自然 環境 SDGs(国連の「持続可能な開発目標」) 社会課題 パラダイム 幸福 日本思想 仏教 古代ギリシア