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講義概要/Course Information |
科目基礎情報/General Information |
授業科目名 /Course title (Japanese) |
技術者倫理 | ||
---|---|---|---|
英文授業科目名 /Course title (English) |
Ethics for Engineers | ||
科目番号 /Code |
CAR604z CAR801s | ||
開講年度 /Academic year |
2024年度 | 開講年次 /Year offered |
4 |
開講学期 /Semester(s) offered |
後学期 | 開講コース・課程 /Faculty offering the course |
情報理工学域 |
授業の方法 /Teaching method |
講義 | 単位数 /Credits |
2 |
科目区分 /Category |
実践教育科目 | ||
開講類・専攻 /Cluster/Department |
先端工学基礎課程 | ||
担当教員名 /Lecturer(s) |
原田 忠則 | ||
居室 /Office |
なし | ||
公開E-mail |
uec-ji1bxm@dialectech.net | ||
授業関連Webページ /Course website |
https://dialectech.net/rinri/ | ||
更新日 /Last update |
2024/09/29 13:18:12 | 更新状況 /Update status |
公開中 /now open to public |
講義情報/Course Description |
主題および 達成目標(2,000文字以内) /Themes and goals(up to 2,000 letters) |
この講座では、技術者が、個人に対し、社会に対し、国家に対し、また世界に対して負うべき責任とその果たし方を、直感的に把握できるように基礎的技法を習得します。 そして、みなさんが今後、商品・サービスを企画・開発・設計・製造・販売・保守をしていく中で、注意すべき点を知識に頼らず自ら気づくことができ、かつその解決策を探ることができるようになることを達成目標とします。 |
---|---|
前もって履修 しておくべき科目(1,000文字以内) /Prerequisites(up to 1,000 letters) |
特にありません。 |
前もって履修しておくこ とが望ましい科目(1,000文字以内) /Recommended prerequisites and preparation(up to 1,000 letters) |
特にありません。 |
教科書等(1,000文字以内) /Course textbooks and materials(up to 1,000 letters) |
教科書は指定しません。講義で必要な資料は教員がWeb上に準備します。 |
授業内容と その進め方(2,000文字以内) /Course outline and weekly schedule(up to 2,000 letters) |
1 授業の概要について 本講義では、3つのパートで構成し、理科系的思考パターンを基調としつつ、文系的指向である技術者倫理を理解できるまでガイドします。 第1部では、思考の基礎となる弁証法を図形的に理解していきます。 第2部では、倫理を検討するうえで重要な「利益」に着目し、一般社会における取り扱い方を見ていきます。 第3部では、第2部までに学んだ技法を用いて、世の中で発生している諸問題をどのように分析し、かつ解決していくのかを検討します。 2 授業の進め方について(講義形態が対面方式となった場合) (1) 講義形式を基本とします。 (2) 前記の形式では講義で進めにくいテーマもありますので、そのときにはソクラテック・メソッド(問答法)を実践します。 3 授業の進め方について(講義形態がオンライン・オンデマンド方式となった場合) 講義形式を基本とします。 4 使用する機器について(講義形態が対面方式となった場合) 個別に発言しにくいテーマにも触れますので、匿名型の電子投票・投稿システムを併用します。スマート・フォンやハンドヘルドPCを持っているかたは、積極的に利用してください。もちろん、これらを持っていない方でも、問題ありません。 5 テーマについて 各回で触れるテーマは以下の通りです。ただし、受講される皆さんの状況によって柔軟に変更します。 第1回 ガイダンス・「対立」を意識することから始める倫理と技術の発展 第2回 思考ツールとしての弁証法(1) 弁証法の図形的理解、Toulminの議論モデルとの関係 第3回 思考ツールとしての弁証法(2) 法の趣旨の再考・主観と客観 第4回 思考ツールとしての弁証法(3) ひととひととの関係、法律・倫理の全体構造を把握する、議論と討論の違いを意識する 第5回 弁証法と集合論、技術者倫理についての一般的アプローチ(文章化された技術者倫理思考法)と、利益についての一般論(個人的利益・社会的利益・国家的利益・世界的利益)、チャレンジャー事件 第6回 法律に見られる利益の調整(1) 概論(精神的利益・身体的利益・経済的利益)、憲法/刑法にみられる利益の保護 第7回 法律に見られる利益の調整(2) 第6回の補足、主として個人情報保護法の利益の理解、「不測の不利益」の意義と理解の仕方 第8回 法律に見られる利益の調整(3) 個人情報保護法の利益の理解の続き、OECD8原則、会社において倫理的な行動をする責任を担う者 第9回 知的財産の取扱い(1) ソフトウエア持ち出し事件、知的財産制度の全体構造、特許制度 第10回 知的財産の取扱い(2) 第9回の補足、General Public LicenseなどのOSS、著作権制度、パロディの取扱い 第11回 知的財産の取扱い(3) 著作権の続き、事例検討技法 商標を巡る制度(商号、商標権)、事例を検討する際の一般的説明(主語と述語とを確定させる意味)、論文無断転載事例 第12回 総合演習(1) 利益抽出作業の高精度化、論文無断転載事例を用いた利益の抽出 第13回 総合演習(2) 解決策に向けた別のアプローチ、Twitter等SNSに見られる倫理問題、公益通報者保護制度、自動車メーカーのリコール放置事案、建築物設計事例 第14回 総合演習(3) 建築物設計事例(続き)、ダム建設事例(SDGsの概要を含む(※1))、風力発電に係る倫理的アプローチ、医療技術者事例(人工弁事例(複数組織が絡む例)) 第15回 総復習 人工弁事例について弁証法的視点での再考、利益を視点とした技術者倫理アプローチの総復習 ※1 SDGsについては、Goalsを無批判に受け入れるのではなく、個別の技術について批判的思考をもってそこに潜む問題点も把握できるようにします。 |
実務経験を活かした 授業内容 (実務経験内容も含む) /Course content utilizing practical experience |
キヤノン株式会社における半導体開発経験、ソニー株式会社における産業用ロボット開発経験、同じくソニー株式会社における特許部・知的財産企画部における知的財産経験、並びに弁理士として特許事務所における中小企業への経営支援・設計支援経験に基づいて、技術者としてもつべき倫理の理解を進めます。 また、指導においては、法科大学院において学んだ法律的知識を背景に、観念論的弁証法を理論的裏付けに用い、総合的かつ客観的立場からの把握視点も意識してもらえるようにして理解を深めます。 更に、持続可能な循環型社会、乃至SDGsについて触れる項目では、気象予報士の立場から問題意識をお伝えします。 |
授業時間外の学習 (予習・復習等)(1,000文字以内) /Preparation and review outside class(up to 1,000 letters) |
法律・倫理系の知識について「中途半端」な予習をすると間違った予断を持つ可能性がありますので、復習を中心とします。ただし、第1回で平成24年度センター試験国語第1問の問題を配布しますので、第2回までにやっておいてください。そして、講座終了時にもう一回同じ問題をやってみてください。講座の趣旨が理解できたならば違った解き方をすることができるようになっているはずです。 復習では講座関連ホームページで配布したPDF形式のプレゼンデータを使って、結果よりも「どうしてこういう結論を導けたのか?」という考え方の部分を確認してください。 倫理については普段の生活のなかで実践するように心がければ、自然と復習になってくるはずです。利害関係の衝突を見つけたときには講義で解説したテクニックを駆使して解決に導いてみてください。 なお、総合演習の回では事案を用いて検討する訓練を行います。このため、各回においては事前に事案説明を読んでおいてください。そして、そこに登場する者・社会・国がどのような影響を受ける可能性があるのか、想像しておいてください。 |
成績評価方法 および評価基準 (最低達成基準を含む) (1,000文字以内) /Evaluation and grading (up to 1,000 letters) |
1 評価方法 本科目は、期末試験で評価します。但し、今期最後まで授業形態の原則が対面方式にならない場合には、レポートで評価します。追試験は行いませんので、試験を受けられない方は救済できません。 2 評価基準 以下の到達レベルをもって合格の最低基準とします。 技術者が一定の行為(作為)をしたときに、若しくは何もしない(不作為)ときに、それによって不利益を受ける者は誰か、ならびにその不利益とはどのようなものなのかを予測・分析し、論理付けをしたうえで、解決案を出せること。 3 具体的な成績の決定 成績は上記基準の下、以下の基準に従います。 S 90点以上、かつ 上からの順位(%) <=10% A 80点以上、かつ 10% < 上からの順位(%) <= 40% B 70点以上、かつ 40% < 上からの順位(%) C 60点以上、70点未満 D(不合格) 60点未満 但し、講義途中で、皆さんの希望があれば中間試験を行い、その成績を加味することがあります。この点についての詳細は講義内で触れます。 |
オフィスアワー: 授業相談(1,000文字以内) /Office hours(up to 1,000 letters) |
メールで時間を調整して、できれば、skype等で相談するようにしましょう。 メールアドレスは、 uec-ji1bxm@dialectech.net です。 |
学生へのメッセージ(1,000文字以内) /Message for students(up to 1,000 letters) |
1 講義総論 我が国では昭和から平成に移る頃から「自己責任」を重視する時代にはいりました。専門職技術者は、自分が担当する開発・生産活動において、他人に対し、社会に対し、国家に対し、ひいては世界に対し、自らの業務に責任を負うことを強く求められるようになりました。このような環境で、技術者は将来に渡り、他人・社会・国家・世界に対する責任をどう捉え、どう行動すればよいのかを、具体的に自ら考えていかなければなりません。にも拘らず、近時大きな企業で多くの偽装事案が露見していて、開発・製品製造への疑念が深まっています。 本講座では、技術者が行動する上で思考の基礎となる技術者倫理に的を絞って検討を加えていきます。そして、本講義の目標は、自ら考えることができる「思考パターン」を身につけることです。知識を学ぶのではなく、智慧を学ぶ講座です。問題から逃げる解決策ではなく、また、Yes-No回答に代表される二分論的解決策ではなく、積極的に問題を「発展」に換えていく発想法を一緒に考えてみましょう。 2 技術者倫理の各論について 技術者倫理を学ぶにあたり、行為規範をなぞっていくという手法があります。行為規範はあくまでも過去に起こった事件に基づいてそれを分析したもので、戦術的なアプローチといえます。 しかし、みなさんがこれから社会で出会う問題は、初見のものばかりの筈です。そのようなときに、過去の事件で成功した行為規範が、必ずしも妥当な解決策を導くとは限りません。むしろ、過去の結論に縛られて、大きな見落としを招くかもしれません。 この講義では、思考フレームワークに弁証法を用い、技術者倫理を戦略的に捉えます。これにより、初見の問題でも一定の妥当な解決策が見いだせるようにガイドします。 |
その他 /Others |
この講座を通して、「木を見て森を見ない。」と言われる現代人の思考パターンと、「木を見るのは勿論、森も見る。」という過去の日本にあった俯瞰的な思考パターンとの差が把握できるようになるとともに、物事を「考える」とはどういうことなのかということも把握できるようになると思います。 なお、思考が柔軟になっていく過程を過去問を通して自覚できるように、期末試験の過去問については、全てWEB上で提供します。 |
キーワード /Keywords |
憲法、刑法、会社法、知的財産法(特許法、著作権法、商標法、不正競争防止法)、個人情報保護法、公益通報者保護制度、倫理、哲学、ヘーゲル弁証法、持続可能な社会(SDGs) |