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講義概要/Course Information

2026/04/09 現在

科目基礎情報/General Information

授業科目名
/Course title (Japanese)
英米倫理学
英文授業科目名
/Course title (English)
Anglo-American Ethics
科目番号
/Code
HSS609z
開講年度
/Academic year
2026年度 開講年次
/Year offered
3/4
開講学期
/Semester(s) offered
後学期 開講コース・課程
/Faculty offering the course
情報理工学域
授業の方法
/Teaching method
講義 単位数
/Credits
2
曜限
/Day, Period
水/Wed 5
科目区分
/Category
総合文化科目
開講類・専攻
/Cluster/Department
情報理工学域
担当教員名
/Lecturer(s)
中山 弘太郎
居室
/Office
公開E-mail
/e-mail
remember.fdd@keio.jp
授業関連Webページ
/Course website
なし
更新日
/Last update
2026/03/05 11:33:59 更新状況
/Update status
公開中
/now open to public

講義情報/Course Description

主題および達成目標
(2,000文字以内)
/Themes and goals
(up to 2,000 letters)
(主題)マイケル・サンデル『公共哲学』の講読。
「政治の場に『道徳』や『宗教』を持ち込むことは、常に危険で不寛容なことなのでしょうか?」「正義は道徳から切り離して議論できるのでしょうか?」――これらは、現代の英米政治哲学における最大の論争、「自由主義」と「共同体主義」の対立の核心を突く問いです。
本講義では、マイケル・サンデルの『公共哲学』をメインテキストに据え、個人の権利や市場の限界、生命倫理といった生々しい社会問題を扱います。終盤では、ジョン・ロールズの『正義論』やウィル・キムリッカの分析にも踏み込み、抽象的な哲学理論が現実の政治的・道徳的課題をどう解き明かすのかを体感していきます。

哲学書をそもそもどう読んだらいいのかというインプットのスキルから、哲学書をどのように整理してノートを作り、自分の議論に活用すればいいのかというアウトプットのスキルまで、少人数セミナー形式のメリットを活かして丁寧に学ぶことができます。政治哲学の中心トピックに焦点を当てて、道徳の原理とあるべき社会の姿の関係について一緒に考えていきましょう。

(達成目標)
(1)倫理学、政治哲学の基本理論に関して、適切に説明し、具体的な議論の中で応用する方法を身につけること。
(2)共通善と美徳をめぐるサンデルの思想を理解した上で、道徳の原理とあるべき社会についての自分の意見を説得的に構成できるようになること。
(3)倫理学の古典を分析的に読むための基本的な手法を習得すること。
(4)倫理学のトピックについて他者と議論できるようになること。
前もって履修
しておくべき科目
(1,000文字以内)
/Prerequisites
(up to 1,000 letters)
なし
前もって履修しておくこ
とが望ましい科目
(1,000文字以内)
/Recommended prerequisites and preparation
(up to 1,000 letters)
なし。ただし、「倫理学A」および「倫理学B」と本授業の内容には密接な関連があります。
教科書等
(1,000文字以内)
/Course textbooks and materials
(up to 1,000 letters)
マイケル・サンデル『公共哲学』、筑摩書房、2011年
https://amzn.asia/d/0iF9SI6s
授業は教科書に基づいて進めるので、教科書は必ず購入し、2回目以降の授業に参加する際には持参してください。その他の資料は配布するため、購入は不要です。
授業内容とその進め方
(2,000文字以内)
/Course outline and weekly schedule
(up to 2,000 letters)
(授業内容)
この授業では『公共哲学』をセミナー形式で一緒に読み進めていくことを通じて、サンデルによる論証を丁寧に再構成し、分析していきます。こうした分析的な読解を通じて、正義に関する基本理論と社会の間の関係を理解するだけではなく、さらにその背景にあるサンデルのより広範な倫理思想を把握することを目指します。具体的な授業の内容は以下のとおりです。

第1回:イントロダクション
公共哲学とは何か 授業の進め方、成績評価の説明。テキストの導入部から道徳・宗教的価値観と政治の関わりについて概観する 。 (『公共哲学』、「はじめに」)

第2回:アメリカ政治と公共哲学の変遷
リベラルな自由観と共和主義的な市民的徳の対立、コミュニティの紐帯の喪失など、第1章から第7章までのエッセンスを解説する 。 (『公共哲学』、第1~7章)

第3回:市場の道徳的限界(1):宝くじ・教育・公共空間
宝くじ、学校への企業広告の導入、公共空間のブランディングについて、市場の論理が市民性に与える影響を議論する 。 (『公共哲学』、第8~10章)

第4回:市場の道徳的限界(2):スポーツ・歴史・能力・環境
スポーツの商業化、歴史遺産の売買、能力の市場化、汚染権取引といった事例から、市場が馴染まない領域を特定する 。 (『公共哲学』、第11~14章)

第5回:【発展講読】能力主義と正義
「能力の市場化」の議論を拡張し、現代社会の格差と分断の根源にある能力主義の問題を掘り下げる。(マイケル・サンデル『実力も運のうち 能力主義は正義か?』より抜粋)

第6回:公共生活における道徳:正義・名誉・生命倫理
アファーマティブ・アクション、犯罪被害者の権利、政治家の嘘、そして幹細胞研究を題材に、名誉や報いの概念を論じる 。 (『公共哲学』、第15章~20章)

第7回:リベラルな寛容と道徳的議論
妊娠中絶や同性愛の権利を巡る最高裁判例から、リベラルな中立性の限界と、実質的な道徳的議論の必要性を考察する 。 (『公共哲学』第21章)

第8回:自由主義の理想と「メンバーシップ」としての正義
カントやロールズの自由主義の道徳的基礎を確認しつつ、ウォルツァーの議論を通じて共同体への帰属の意味を問う 。(『公共哲学』、第22、24章)

第9回:負荷なき自己と手続き的共和国
サンデルのコミュニタリアン的批判の核心である「負荷なき自己」の概念を精読し、現代リベラリズムの人間観を検討する 。(『公共哲学』、第23章)

第10回:自由主義の多様性と人間の傲慢さ
個人主義の限界、デューイのプラグマティズム、そして生命工学における人間の「傲慢さ」について論じる 。 (『公共哲学』、第25~27章)

第11回:【発展講読】生命倫理と「授かりもの」としての命
「人間の傲慢さ」の議論を深め、遺伝子工学や能力増強に対する道徳的懸念を「才能は授かりものである」という観点から掘り下げる。(マイケル・サンデル『完全な人間を目指さなくてもよい理由』より抜粋)

第12回:ロールズ『正義論』入門
次週の批判的検討の前提として、ジョン・ロールズの『正義論』(無知のヴェール、格差原理など)の基本概念を整理する。(マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』第6章)

第13回:政治的リベラリズムを巡る論争
後期ロールズの『政治的リベラリズム』に対するサンデルの重厚な批判論文を読み解き、正義と善の関係について総括的に議論する 。 (『公共哲学』、第28章)

第14回:コミュニタリアニズムの批判的検討(1)
ウィル・キムリッカの分析を補助線とし、サンデルらの議論を客観的な政治理論の枠組みの中で評価する 。(『公共哲学』、第29~30章および ウィル・キムリッカ『現代政治理論』より該当章)

第15回:コミュニタリアニズムの批判的検討(2)
国家の中立性や状況づけられた自己などの概念について、リベラリズムとコミュニタリアニズムの論争の到達点を確認する。(ウィル・キムリッカ『現代政治理論』より該当章)

※セミナー形式で行う授業のため、授業の進度は受講者との議論の性質に大きく左右されます。上記のプランはあくまでも一つの目安です。予定より早く進んだ場合、サンデルの他の論文や著作の一部を読む予定です。


(進め方)
1回につき教科書を20~40頁程度ずつ読み進めていきます。毎回指名した受講者に教科書の内容をレジュメにまとめて発表してもらいます。次に、受講者の発表に対して担当教員が簡単なフィードバックを行います。その上で、事前に集めた受講者の質問に答えながら教科書の内容について参加者全員で議論していきます。
※受講者数によっては授業の進め方を変える可能性があります。受講者が少ない場合、担当教員も何回かレジュメ発表をする可能性があります。受講人数が多い場合、レジュメ当番を設定せずに、担当教員の解説と参加者全体の議論のみで授業を進める可能性があります。
対面授業・遠隔授業の別
/Face-to-face or online lecture
対面授業
実務経験を活かした
授業内容
(実務経験内容も含む)
/Course content utilizing practical experience
なし
授業時間外の学習
(予習・復習等)
(1,000文字以内)
/Preparation and review outside class
(up to 1,000 letters)
(予習)
教科書を読み、毎回の事前課題を作成・提出すること。発表当番の事前課題は、教科書の内容を要約したレジュメ(A4用紙数頁)の作成である。それ以外の受講者には、教科書の内容に関する質問・疑問点・論点を書いたコメントの提出を適宜課す。

(復習)
発表者のレジュメや授業でとったノートを見返しながら、授業で扱った教科書の箇所を読み直し、理解を深めること。
成績評価方法
および評価基準
(最低達成基準を含む)
(1,000文字以内)
/Evaluation and grading
(up to 1,000 letters)
(評価方法)
平常点:授業中での発表・議論への貢献 60%
期末レポート(2000~2500字程度) 40%:詳しいテーマと書き方は授業中に説明する。

(最低達成基準)
a.最低でも15回のうち12回以上の授業に積極的に参加していること。
b.期末レポートの点数が6割を超えていること。
オフィスアワー:授業相談
(1,000文字以内)
/Office hours
(up to 1,000 letters)
質問・相談等は授業後、もしくは電子メールで受け付ける。
学生へのメッセージ
(1,000文字以内)
/Message for students
(up to 1,000 letters)
私たちは、自分の生き方は自分で自由に選ぶべきであり、政治や法律は個人の道徳観や宗教観に対して「中立」であるべきだという考えを前提にして生きています。また、多くの社会問題を「市場の論理」に委ねることも、すっかり私たちの社会のなかで「当たり前」になっているといえるでしょう。この授業では、マイケル・サンデルという哲学者が書いた一冊の本をツールとして使うことで、こうした「道徳なき政治」や市場化が、私達自身の人生と社会に与える影響を分析的に論じる方法を身に着けていきましょう。
その他
/Others
セミナー形式の授業なので、受講希望者が一定数(15~20名程度)を超えた場合は抽選で受講者制限を行います。受講希望者は第1回の授業には必ず出席してください。2回目以降からの履修は特別な事情がない限りは認めません。
キーワード
/Keywords
サンデル、コミュニタリアニズム、正義論、政治哲学、倫理学